みなさん、ゲームは好きですか？ 実は今、ゲームの歴史に革命を起こすかもしれない、画期的なAIが生まれています。それがAIゲームエンジン「GameNGen」です。Google ResearchやDeepmindの研究者4名が発表しました。

伝説のゲーム「DOOM」が、AIで蘇る！

GameNGenは、AIの一種であるニューラルネットワークを使って、ゲームをリアルタイムに生成するゲームエンジンです。つまり、これまでのようにプログラマーが一つ一つコードを書いてゲームを作るのではなく、AIが自分で学習して、その場でゲーム画面を作り出しているんです。

そのデモンストレーションとして選ばれたのが、伝説の3Dシューティングゲーム「DOOM」です。いわゆるFPSです。1993年に発売されたDOOMは、当時の技術では考えられないほどリアルな3Dグラフィックスを実現し、ゲーム業界に大きな影響を与えました。プログラマーのジョン・D・カーマック氏が手書きで開発したゲームエンジンは、今でも語り草になっています。

そんな歴史的なゲームを、GameNGenはAIだけで再現してしまったのです。しかも、人間のプレイヤーの操作に合わせてリアルタイムに生成できてしまうんです。

AIは、どうやってDOOMを学習したの？

GameNGenは、2つのステップでトレーニングされます。

1. 強化学習エージェントにDOOMをプレイさせて、そのプレイデータを記録する

2. そのデータを使って、ニューラルネットワーク（安定拡散モデル）を学習させる

強化学習エージェントは、「敵を倒す」「アイテムを取る」など、ゲームを進めるのに良い行動をすると報酬がもらえるように設定されています。逆に、ダメージを受けたり死んだりすると、罰則が与えられます。こうした報酬と罰則の設定は難しく、ときには意図しない結果を生むこともあるんです。

例えば、ポケモンの強化学習エージェントは、レベルの高いポケモンを預けるとレベルが下がるペナルティを与えられたため、預け屋に近づくことさえ拒否するようになってしまったことがありました。これは、エージェントにとって「トラウマ」のようなものだったのかもしれません。

こうして集められたDOOMのプレイデータを、安定拡散モデルに学習させます。すると、プレイヤーの操作に応じて次の瞬間のゲーム画面を予測し、リアルタイムに描画できるようになるのです。

GameNGenが生成するゲーム画面は、本物のDOOMと見分けがつかないほど高精度です。

人間のテスターに本物とGameNGenの画面を見せて判別してもらったところ、わずか1.6秒の短いクリップでは58％、3.2秒のクリップでも60％の正解率しか出せませんでした。

つまり、ほぼ「当て推量」に近かったということです。

ただし、AIエージェントのプレイは、人間のプレイヤーとは少し違うようです。例えば、人間はゲームを探索しながらプレイしますが、AIエージェントは最短ルートで効率的にクリアしようとする傾向があります。また、AIエージェントは反応速度が速すぎるため、人間のプレイヤーが追いつけないこともあるようです。

GameNGenの技術は、ゲーム開発の在り方を根本から変える可能性を秘めています。

これまでのゲーム開発では、プログラマーがコードを書き、デザイナーがグラフィックを作り、それらを組み合わせてゲームを作っていました。しかし、GameNGenのようなAIを使えば、ゲームのルールを教えるだけで、あとはAIが自動的にゲームを生成してくれるようになるかもしれません。

ゲーム開発のコストと時間を大幅に削減できるでしょう。

また、AIが生成するゲームは、プレイヤーごとに最適化されたゲーム体験を提供できる可能性もあります。

さらに、GameNGenの技術はゲーム以外の分野にも応用できるかもしれません。例えば、建築や都市計画、映画制作など、コンピューターグラフィックスが使われるあらゆる分野で、AIによる自動生成が活用されるようになるかもしれません。

もちろん、GameNGenにはまだ課題もあります。例えば、AIが学習するためには膨大なデータが必要ですし、AIが予測不能な動作をしてゲームを壊してしまうリスクもあります。また、

AIによるゲーム開発が進むと、ゲームクリエイターの仕事がどう変わっていくのかという問題もあります。

しかし、これからの技術の発展によって、これらの課題はきっと解決されていくでしょう。そして、GameNGenに代表されるようなAI技術が、私たちの創造力を大きく拡張してくれる時代が、もうすぐそこまで来ているのです。

みなさんも、ぜひこの新しいAI動向に注目してみてください。そして、自分なりに「ゲーム」や「遊び」の未来を想像してみてください。きっと、わくわくするような発見があるはずです。ゲームの世界は、無限の可能性に満ちているのですから。